ちいきのたより 『 瓦、みてご。 』
芒種 梅子黄
青かった梅の実が梅雨と共に黄色く熟す頃となりました。
平年より遅れている香川の梅雨入りもあと少しでしょうか。
この頃はもわっとした空気に身を包まれ、
汗がじんわりと出てくるような暑さが続いています。
ところで皆さんは、香川の建築の特徴をご存知でしょうか。
かなまるスタッフたちが言うには「瓦」に特徴があるのだとか。
ということで、わたしの祖父が若い頃に建てたらしい我が家の屋根を見てみました。
住み慣れたはずの我が家の屋根。
改めて見てみると迫力を感じました。
ご近所さん宅や通勤途中にも、昔からあるお家には迫力のある屋根瓦が目立ち、
様々なデザインが施されています。
それが、香川県の屋根瓦の特徴なのです。
一体どのような「瓦」があるのでしょうか?
香川県の特徴のひとつに「鬼瓦」があります。
通常の「鬼瓦」は鬼面をしており魔除けなどの意味があります。
しかし、香川県の「鬼瓦」は鳥や魚、松竹梅などが多く見られます。
より福が舞い込むようにと縁起の良い動植物を取り入れるようになったようです。
鬼瓦の基本的なデザインは「雲」と「水」であり、
風害や火災から家を守るなどの意味が込められています。
雲は下から、水は上から渦を巻いているのだそう。
玄関上部に「鷹と松」、写真には写っていませんが、
右下に「鶯と梅」、左下に「スズメと竹」が一般的です。
また、特徴的なものとして「井筒」と「水板」があります。
デザイン性と共に軽量化されており、内部の構造もしっかりとした丈夫な棟瓦です。
<井筒(いづつ)>
「井」の形をし、中は筒状となっている。
<水板(みずいた)>
竜や虎、水や鯉などが彫刻されている。
そして、金丸工務店のある三豊市が所属する「西讃地域」では、
通常の覆輪より三重になった「三重福輪」が多く見られます。
幸福が3倍になりますようにと願いが込められているのだとか。
<三重福輪(さんじゅうふくりん)>
年輪のように輪が三重になっている。
なぜ、このように様々な「瓦」があるのでしょうか。
それは、香川県が瓦の産地であったことがきっかけなのです。
香川県には、愛媛県や淡路島まで続く「三豊層」という粘土層があり、
丸亀市の土器川付近で「瓦」に適した良質な土(丸亀粘土)が
採れたことで瓦つくりが盛んになりました。
そのため、明治から昭和と沢山の瓦屋さんが県内に点在し、
高度な技術を持つ職人さんが居たようです。
瓦つくりの歴史は淡路よりも古いと言われている香川県では、
早くから民家に「瓦」が取り入れられ、
まるで隣の家と競い合うかのように多種多様なデザインで装飾されてきました。
お施主様と職人さんが一緒になり作られた家々からは地域独特の美しさが溢れ、
その場所で起きた当時のドラマを物語っているようにも感じられます。
近頃では屋根瓦の家は少なくなり、
手入れのされない空き家が増えているのが現状です。
しかし、香川県には歴史のある職人技術を今も受け継ぎ、
頑張っている職人さんたちがいます。
今回の記事作成にあたり協力してくださった地元の瓦屋さんでは
若い女性の鬼師さん(鬼瓦職人)が活躍しています。
その素晴らしい技術と地域独特の美しい屋根瓦が失われることのないよう、
当たり前になりすぎている風景や忘れかけている歴史を今一度見直していきたいですね。
地元の瓦屋さんでくちばしなどが修理された鬼瓦。
瓦の積み方を変えることで棟瓦の雰囲気も変わります。
香川県にお住まいの方は、我が家やおじいちゃんの家の屋根を見上げてみてくださいね。
香川県に訪れた際には、屋根瓦から感じる独特な美しさと歴史を感じてみてくださいね。
「瓦、みてご。(瓦、みてごらん。)」
この記事は、町の工務店ネットが運営する「住まいマガジンびお」に掲載されています。
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